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■■□■■  物┃流┃現┃場・見┃た┃ま┃ま・感┃じ┃た┃ま┃ま┃  

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□■■    2012/6/15   NO.475                        □□■

■■     『売上と在庫の関係』 ザ・クリスタルボール再読  □□■□

■      物流改善ヒントhttp://avance-tokyo.com        □□■□□

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PRAY FOR JAPAN と全世界からメッセージが届きました。

その一部は prayforjapan.jp と編集された本で見ることができます。励ましと

勇気と祈りに満ちたそのメッセージに、私たちはきちんと答礼しなければなりま

せん。命と生活を支えたのが物流であったこと、確信したこの仕事の大切さを心

に刻んで、どんな時にも物流を手放してはいけない、という決意が教訓として残

されました。事業の継続に必要なBCPも、物流なくして計画の完成は出来ません。

最強のBCPとは物流を使ったリスクマネジメント、それを著したのが私の答礼。

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■TOCで名を馳せたゴールドラット『ザ・クリスタルボール(水晶球)』

未来を占う水晶に何が見えるのか。今回はチェーン小売業でホームデポを紹介し

ています。事故で店頭在庫が無くなったのに、物流によって適時適量の配送を行

うと、在庫が四分の一、売上は2割増し、利益率が30倍になった大事件を取り

扱います。なぜ?・・・・販売と在庫の事実が白日の元に。物流マン必携の自慢

話ノベルズです。

 

●価値観の転換、パラダイムシフト

 

バブルの崩壊、ものが売れない、デフレ、景気低迷・・・様々な苦境に対応して

きたのが時代の流れです。では変化の根底にはどのようなパラダイムシフトがあ

ったのか。いろいろな視点から振り返ってみましょう。

 

■経営者視点では。

「生産したものは必ず売れる」という未来は予測可能という考え方が崩れて、

未来はことごとくに<不確実で予測不能>となったこと。

■財務視点では。

「財務会計では(利益)は作文できた」という在庫や原価中心の業績から、

<現実的で操作不能のキャッシュフロー計算書>が主流になっている。

■金融視点では。

「事業の拡大を支える含み資産と間接金融」から<CF重視の経営と直接金融>

に移行している。

■製造・販売現場では。

「現場のプロ、ヒューマンウェア管理」からITを活用した情報管理になった。

■部門責任者では。

在庫積み上げに代表される「組織部門最適」から<CF効果最大化の全体最適>

に移行している。

■生産手法では。

「大量生産による効率経営」から、<売れるものだけを高速で作る夢の工場>に

転換を余儀なくされている。

 

 さてこれだけ価値観というパラダイムが変換すれば、生産販売に付随している物

流も大きく変化しなくてはなりません。

たとえば、SCMに代表される商品のパイプラインに係わる多くの企業にとっての

全体最適の視点から、いずれかの企業のCFが最大化するのであれば、コストを掛

けた物流も必要になります。さらに、CFを基準とした商品や得意先の選別、切り

捨てもしなくてはなりません。

 

 「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」行ってきた物流の<必要って?>

どのプレイヤーにとっての必要か、CF効果からみたタイミングと量は?という事

になるのです。

 よく言われる物流の効率化、限られた時間やスペース、要員やコストの中でどれ

だけ処理できるか という価値観も、実は間違えであることがあるのです。

 効率化ではなく、経営や部門、財務や生産の視点から見ての有効性が必要になる

訳です。効率化を広く、深く捉えることが必要なんですね。

 

●SCMと物流

 

限りなく実需に対応することがパラダイムシフトによって必要になりました。予測

は不可能だから、外れるリスクを避けるためには予測期間を限りなく短くしなくて

はなりません。SCMが需要予測のシステムで代表されるように、実需と生産能力

の確保には最少期間の予測が必要になります。このときの条件は、CFが最大化す

ることになります。もし、CF効果がSCM全体で増えると確信できるときに限っ

て、製造原価が上がっても小ロット生産を行わねばならないし、輸送コストが高く

なっても積載率を無視して高速輸送を行うのです。ある商品群の欠品が発生しても

貢献度の高い得意先指定商品を優先するのです。

 

今までの常識を覆す生産と販売と物流が登場しているのです。

何から何まで転換することが、パラダイムシフトと呼ぶ状況なのです。

 

●SCMだから在庫を減らす、物流速度を上げる、生産方式が代わる・・というの

ではなく、価値観が転換していることに気づかねばなりませんね。

いかに売るか、という視点では受注問題と在庫問題がSCMにはついて回ります。

ブルウィップという受注の特性があります。小売り、卸、製造、原材料のパイプラ

インの中で、実売情報は段階的に膨らんで情報が劣化していきます。

手元の小さな動きがムチの先では大きく振れることから、ブルウィップと呼びます

そのわけは、

 

・もっと売れるかも知れない、という「予測」を各プレイヤーがする

・ボリュームディスカウント政策があって、まとめ買いをしたい

・欠品を恐れて多めの発注に迷いがない

・注文処理がバッチになっているので、予備を見込むから

等の理由が妥当です。受注の実態をまぼろし(ファントム)といいます。

 

そして、在庫問題は組織的な部分最適=業績連動からみても、誰も削減をしたがり

ません。

 

・原価低減

・欠品防止

・いつか売れるという「予測」

 

削減したら得になるのが経営財務で、現場は大忙しになります。

 

●パラダイムシフトがあっても、行動様式が変わらないから

 

SCM導入の先進企業だったソニーとキャノンは20年前から、実務と組織でSC

Mを実行してきました。結果の業績は大きく様変わりで、部門閉鎖も起きてしまい

ました。頭で分かっても、組織目的や行動様式に変化をもたらさなければ、セミナ

ーに通い詰めのお父さん、リーマンと何も変わりがありません。

 

運命を変えるには、習慣を変える、習慣を変えるには思考法を変える、思考を変え

るには瞬間の気づき、毎日の小さな積み上げから変わります。

 

今までの効率にその意味が180度も変わっているのです。間違えが常識になりつ

つあるといっても良いのです。先輩の話、本の知識、回りの人の考え、よくよく注

意して心がけておかないといけないですね。

 

●クリスタルボールが紹介する在庫削減と利益爆発の関係は、従来の財務会計では

あり得ない大事件です。しかし、在庫が総額管理から単品の販売係数管理に変われ

ば、欠品の抑制だし、資産の回転率向上に直結します。

 

販促活動が品揃えに徹底すれば、顧客の買い上げ単価が向上して特売の必要が無く

なります。無理な販促は経費が増える事を思えば、少量多頻度の高速物流の方がは

るかに経費抑制策であることにも気づきます。

 

製造工場に大ショックを与えたゴールドラット博士の理論が、小売りと在庫に示さ

れました。物流の役割が再評価されるすばらしい理論ですね。

 

 

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