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■■□■■ 物┃流┃現┃場・見┃た┃ま┃ま・感┃じ┃た┃ま┃ま┃ □
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□■■ 2012/6/25 NO.476 □□■
■■ 『物流業の転換点』 どこまで値下げ? □□■□
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『物流不動産ビジネスのすすめ』http://lnews.jp/2012/05/e053001.html が増
刷になっています。倉庫や工場を対象とした不動産事業の解説ノウハウ本ですが、
物流業界以外での反響が大きいのが話題です。建設や設備工事、地方銀行や製造
業者など、間接的に倉庫を見ていた業界が「何となく大型物流施設の活況」をう
らやんでいたところの出版だったので、タイミングが良かったんでしょう。
ということで、話題の本から少し紹介しましょう。
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■『物流不動産ビジネス』というのは、倉庫や工場、新旧物流施設について、不
動産事業として捉え直すという思想です。不動産事業は、開発、売買、管理契約
というように、市場ニーズに合わせた都市開発や大型商業施設の開発が最近特に
注目されています。たとえばスカイツリー近辺は、古い街並みの住宅や商店でし
たが、タワーと共に巨大な商業施設が誕生しました。おかげで、地価も上がり、
人の流れが変わって、浅草と合わせて観光名所になりました。
売買は高額資産の流通なので、最近は下火傾向にあるし、土地神話というのも消
えましたので、取引のブームはすでに終わっています。けれども、再開発絡みの
売買や中古住宅の再評価に伴って、「値下がりする不動産の活況」というのが事
実らしいです。管理はアパートや駐車場の管理業務ですね。
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●物流用の不動産にどんなニーズがあるのか。我が国の不動産総額は2300兆
円で法人所有は471兆円(土地382,建物89)もあります。誰が所有して
いるかというと、一番は工場に使われる製造業で105兆、次には不動産会社の
64兆、そして倉庫運輸業の43兆円と続きます。
法人所有の10%が正に物流に使われている不動産であって、かつてのバブルの
ように「値上がり目的で保有」をしているわけではありません。不動産は資産で
あって、同時に借入金の担保としての負債という面も持っています。
●不動産は財産なので保有には税金がかかり、たとえ自社物件や土地であっても
実際には「コストゼロ」ではありません。むしろ、調達した時代に比べれば値下
がりしていますから、「見えないコストで、保有の損」などが生じています。
だからデフレ、ということでもあるのですが、そのために自社物件を手放してそ
のまま借りる、という「セルアンドリース」方式は、NECの田町本社ビルから
始まりました。今でのひっそりと話題に挙がっています。
●自社工場や倉庫というのは、元々土地単価が低いので売買の対象にはなりずら
くて、城南地区の鉄工所が物流施設に変わる位の取引しかありませんでした。羽
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田空港拡張に伴い、湾岸地域の物流施設開発が活発になったりして倉庫用地の取
引が活発化した頃もありました。
取引は法人所有から、法人所有へ。単なる大家代わりかと言えばそうではなく、
自家利用から賃貸物件への開発業者の購入が増えたのです。それは、低金利時代
の鬼っ子であって、保有の(値下がり)リスクを、運用による(実利収益)への
転換だったのです。不動産購入の資金調達金利と、賃貸運用に伴う投資収益金利
の差が大きく、大型倉庫は収益事業として見直されています。実質2%の低金利
が続く限り、この事業モデルは安泰でしょう。同時に銀行の準備率0.1%とい
うのが、企業保有資金の1000倍の潜在的な投資余力となっています。
●では実際に、倉庫や物流施設を利用している法人とその大家さんにとってはど
う環境が変わってきているのでしょうか。
一つは倉庫や施設が、実際の物流運営コストに影響していることに気づかねば成
りません。
高い住宅はそれなりのステータスやブランド、立地の良さが影響しますよね。同
じように、安い倉庫と高い倉庫は実際にはあまり料金面での違いは少ないけれど、
実際の使い勝手や立地の違いが明らかです。駅や道路に近い倉庫と地方の工業団
地や古くからの倉庫では料金差があまりありません。
それなのに、作業者の集まり具合や輸送経路の短縮効果、荷扱いの便利さには格
段の違いがあります。
●物流マンはいつも『ワンウェイ、ワンフロア』という直行率を口にします。エ
レベータのある倉庫よりは、広いワンフロアが大好きです。高速コンベアのある
施設より、広々として人海戦術が使いやすい倉庫を好みます。
それで古い倉庫から大型倉庫へのラッシュが続いているのです。どっちが物流を
しやすいのかは明らかで、これからは旧型倉庫の再開発というか立て直しや作り
替えがブームになるでしょう。
となれば、建設や設備事業者の出番ですから、物流不動産はそれだけでも魅力的
に写っているのです。
●方やすでに所有している43兆円の大家さんにとって、資産を持てあましてい
ることがありそうです。倉庫が狭い、臨時在庫の手配先がない、大口商談を受入
できない、・・・・持っていても十分に使いこなしているとは言い難い。むしろ、
保有のリスクが年々高じてきているといえるでしょう。
そこで、自社保有の倉庫業や運輸業でも、自社物件以外の取扱ができるように不
動産事業の組み込みが必要になります。自社資産がありますから、仮に賃貸物件
を利用しようとしても、十分な信用能力があります。そこで、自社物件の数十倍
の賃借物件を運用するような、新手の倉庫業者さんが登場しているのです。
●持っていなくても、持っていても、不動産業は成り立ちます。保有の優位性は
借用の劣位ではなく、運用の腕次第と言えるでしょう。
そのあたりに物流不動産をビジネスモデルと呼ぶ秘訣があるのです。大型物流施
設のおかげで旧型倉庫に契約の空きが増えました。当然だけれども、その空きを
埋めるには営業力が必要です。けれども、従来のような物流営業では自社物件し
か扱いませんので、すぐさま見込み客リストが足りなくなります。
そこで不動産免許を持った物流営業が必要となり、自社物件以外にも他社の倉庫
を営業対象とする技が使えるようになるのです。不動産事業は許認可性ですから、
宅地建物取引主任の資格が必要です。宅建予備校が満員なのも頷けます。
●お客様の物流コストを下げるために、値下げしていたのでは事業が細るばかり。
しかも、来年もその次も同じ事を繰り返すなら、物流の仕事は長くは続きません。
全体の事業規模を上げるためにコストダウンを図るという、トータルアプローチ
が重要となってきます。
そこでは、運賃単価を下げるために立地の良い多機能倉庫をあてがったり、作業
費を募集経費から下げるために大型施設への移転を図ったりと、複合的な方法を
駆使して物流コスト総額を抑制する方法が必ずあります。そのための、物流施設
を不動産事業として組み込むことが必要となってきたのです。
所有するだけでなく、物量変動や時流に合わせて自在に拡張できる倉庫を持つこ
とができれば、それは利用するという視点から不動産を売買と賃貸の両面から使
い分ける手法があれば可能です。
●物流業界が3PL事業と呼んでマーケティング色を強めていますが、成功して
いるのは大手だけとも言われています。大が小を押さえ込んでいくのは、自然の
流れでしょうが、逆転するための秘訣がこのビジネスモデルにあるのです。
どうぞしっかり学んで、事業に活用して欲しいモノです。
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