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■■□■■  物場・見ま・感   □

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□■■    2012/7/15   NO.478                        □□■

■■     『在庫問題を初めから目的、理由、見なし方    □□■□

      物流改善ヒントhttp://avance-tokyo.com         □□■□□

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7/21(土曜)14:00~東京海洋大学

「通販物流の現状と課題〜与信管理及びリスク分析の方法等」で物流学会の関

東部会研究会が開かれます。http://www.logistics-society.jp/JLS-kanto.html

通販物流のちょっとした歴史の振り返り、現在の問題点、これからの期待につい

て、私の経験と調べた事を発表します。「学会」ですから大学の先生や大学院生

他、一般の物流事業者さんも参加するそうです。学校の教室での発表、授業形式

ですから、かなり緊張。

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●在庫をゼロから考えてみる

それってカンバン方式、預け消化方式、国際VMI、責任転嫁のことでしょうか、
と尋ねられたので整理してみましょう。
優れた商品を作り出せる企業があって、拡大する顧客層とマーケットがあるなら
どこにも成長の不安はないようなのですが、実は良い会社でも失敗することがあ
ります。それは資金繰り計画と在庫計画です。


マーケットの消費能力をほんのちょっと上回る供給を行えば、どんなに研究投資
を掛けた商品でも値崩れを起こします。競争相手がダンピングを仕掛けるからで
正当な競争がなくても、価格情報は瞬時に広がりますので建値は維持できません

供給は生産・調達と在庫に意思が伝わり、造りすぎが価格低下をもたらすのはデ
フレの原因になっています。また、いっそうのコストダウン、販売機会ロスを怖
がっていると、生産計画と在庫の積み上げに一切のためらいがなくなります。

在庫を増やすことは何にも恐くなくなってしまうのですが、その結果が恐ろしい

事態となって降りかかってくるのです。

●在庫の目的

売れたらどうする、コストダウンのためじゃないか、適正在庫は時間と共に高め
になるのは、商品部や工場が臆病だからではありません。欠品が怖い、原価低減
のしばりが怖いという、ごく自然の成り行きです。誰も悪くない。

パナソニック松下ショックがあったとき、「創造と破壊」ってすごい改革を打ち

出しましたがV字回復のきっかけは在庫削減とキャッシュフロー経営への回帰で

した。

キャッシュフローによる業績計画や実績の評価方法は、経理課長の社内講習と情
報システムによる新しい会議資料ですぐに定着します。つまり、造っても、売っ
ても結果として今月の現金はどれだけ増えた?と聞かれるからです。

特に売り方に刺激が走ります。販売計画の未達は在庫の積み上がりになり、現金
が少なくなりますから、販売機会の確保のために許されていた「アレもとっとけ
これもとっとけ、いつか売れる」という在庫計画は没になります。

●在庫の理由

作り方も沢山造って原価を下げよう、間接コストも在庫一個当たりに分散させよ

う、工場にも利益が必要だと考えられていたところ、月次で現金が原材料資材に

なっていたら叱られます。そうか、小さなロットで造れば使命は満たすのか、と

いう工場のラインがなくなり、ショップ型に転換されました。これって、JIT

だった、カンバン方式だった、と改めてトヨタ流のすごさが評判になったのです。

●在庫は何のためにあるか

松下では在庫のことを罪庫と呼んで、創造と破壊の大改革を進めました。営業は
明細での販売計画を確約して、「何が売れるか分からない」などとは決して口に
せず、売るべき商品を展開します。製造も販売計画へのフィット、短納期に工場
機能を洗い替えして、段取り工程を短縮して速度アップを重視しました。

結果は在庫の歪みやゆるみがなくなり、莫大なキャッシュフローが生み出されて
販促費用も潤沢に投入できたのです。売上よりも利益を追求し、コストダウンよ
り在庫過多を嫌うことがマーケットへの俊敏さの秘訣となってV字回復を果たし
たのが、勝てば官軍の実際です。


●在庫は能力のカバー、時間のヘッヂ

販売計画の精度が低ければどれほどの品揃えをしても売上は伸びません。それは
言い訳だから、売上には品揃えが必要で予約も見込みもあると主義が通ります。
結果として、販売サイドには何の矛盾もなく在庫の積み上がりが安心感を生みま
す。製造もまた、短納期の不安から原価低減と間接コストの分散を図って在庫を

容認します。理由は販売精度にあって、工場というハードウェアの能力制約もま

たそうです。そして、適正在庫の見直しが部門内で行われ、総額でのしばりがあ

っても品目数は積み上がります。

販売、生産の能力を代替するために在庫はあり、厳しい能力を誇るなら在庫削減
への挑戦と能力向上が同じ方向を向きます。


マーケットの需要変化に間に合わない、作りきれない、他社に負けるという時間
の出遅れリスクをヘッヂするのが在庫で、だから在庫は金額ではなく、製造リー
ドタイム日数、販売実績日数で換算表示すれば、安全確保は何日分になるのかが
わかります。保険や余裕の厚さがわかるのです。回転率や金額ではピンときません。

●在庫を日数表現すると、財務部門が動き出す

在庫はキャッシュが眠っている状態で、間接原価が含まれています。大切な資産
であって、同じ条件で販売が可能ならキャッシュも原価も安泰です。しかし、肝
心の資金繰りに苦労するなら、運転資金は何日分が必要か。

売掛金日数+在庫日数−買掛金日数 という計算式が運転資金日数を示していて
これが減れば財務が喜ぶ。機動的な経費の投入と投資計画が立ちます。

物流部門が見ている仕入れ、販売、在庫は資金計画と等しいことに気づけば、物
流の味方は財務であるわけです。在庫削減は音頭取りを財務に任せて、シナリオ
を作ってあげれば組織は動きます。


●優れた商品とマーケットと在庫削減ができれば

爆発的に売れた商品は、時間と共に積み上がり不良在庫に変化します。売れ残り
捌き切れずに不良資産となって、財務を圧迫します。最悪、黒字倒産を招くのが
資金繰りの結果ですが、決して無謀な無茶な在庫計画ではなかったはずです。

これくらい積み上げても売れる、これだけ作らねば売り逃す、利益が少ない。
こんな金額や回転率での在庫設定や基準在庫の見方であれば、販売の変化に気づ
きません。過去数週間の販売実績から、今日の在庫を日数換算しておけば、どれ
ほどの確保が安全安心なのかが分かります。持ち過ぎ、不安も20日分も越せば
誰もが気づく。

このような在庫を見る目を変えることが、V字回復、キャッシュフロー経営、物
流を経営戦略に生かす道だと分かるのに、まだ広まらないのは事例が松下だから
なのでしょうか。手が届かない雲の上の名門企業の話しだからでしょうか。

それとも、過去の失敗を見て我が身を直すことがないからでしょうか。

●適正在庫の見方

ナニ計算式が分からない、販売実績の移動平均で在庫数を割れば日数換算できる
のです。運転資金も営業日の数日分で見れば、改善改革の目標も比較もできるこ

とになりますね。食品は3日分、輸入品は3週間分、アイテム毎に主力商品は欠

品気味でしょうが、Bランク、Cランク商品はこの3〜20日の中に納めなけれ

ば資金ショートするのです。高く売るより早く売れ、沢山作るよりこまめに作れ

という先例がここ彼処にあるのです。

 

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