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■■□■■  物┃流┃現┃場・見┃た┃ま┃ま・感┃じ┃た┃ま┃ま┃   □

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□■■    2012/9/5   NO.483                        □□■

■■     『キャプランABCの反省』物流コストを測定して  □□■□

■      物流改善ヒントhttp://avance-tokyo.com       □□■□□

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来週は東京ビッグサイトで2年振りの国際物流展示会が開催されます。会場には

様々な物流ソリューションが提案されることでしょう。超大型施設のプレゼンか

ら、スマートフォンを活用したGPSナビシステムや携帯バーコード端末化アプ

リ、そしてPAYPALはスマフォにカードリーダをセットして、レジ機能まで。

物流カテゴリーが建設業界や金融機関まで取り込まれて行く様を見てください。

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●観察と測定、分析と検証というアプローチが物流改善の手法として定着し、そ

れで良いのだと信じてきましたが、最近はどうも足りないようです。もともとデ

ータ分析にどんな意味があるんだろうと懐疑的、というか面倒臭い性格だったの

で、『過去を調べて明日が分かるのか?』という立場を譲ることはありませんで

した。

データ分析が役に立つのは、傾向が分かるだけ。ならば現場に聞けば体感的、直

観ですぐさま答えてくれて、大きなブレはほとんどありません。順序が逆で、現

場で不安に思っている検証作業のためにデータ分析をするのが本筋だったのです。

 

●コンサルティング業界では泣く子も黙る『ABC』があります。ロバート・キ

ャプラン先生が1980年代、アメリカの不調調査のためにMITソロー教授を

筆頭に調査団を日本に送り込み、膨大な名著『メードインアメリカ』を発表した

際にホワイトカラーの生産性分析や日本製品の実態コスト把握に役立ちました。

その後、アメリカではこのABCを利用して間接部門、研究開発部門、マーケテ

ィングや営業企画のコスト実績を把握するために活用され、悪魔の理論と恐れら

れました。

 

●だって報酬と成果物を時間単価で計算したモノだから、見積書は何枚書いたか、

デザイン図は何枚何時間で仕上げたか、経理伝票は1枚当たりいくらのコストに

ついているか、というようにひたすら管理部門のコスト把握に使われたもんだか

ら能力格差がはっきりとグラフ化されてしまったのです。当然、平均値を下回る

彼は次期ベンチ入り候補として指名されたからです。

 

それが巡り巡って日本にも導入され、物流ABC手法として中小企業庁や専門機

関まで作られて大ブームになりました。これが95〜00年くらいでしょうか。

物流部門に限らず翻訳に携わった専修大学櫻井道晴教授らは、『間接費の管理』

手法として大々的に取り上げ、自治体や銀行まで管理部門コスト把握に使われま

した。目的は、本来の狙い通りに次期ベンチ組をマーキングするためのリストラ

理論でした。

 

●コストの分類では間接費と直接費、配賦計算などの会計理論がありますが、A

BCの出自は間接費でした。それを工場の生産原価や物流の実態コストとしての

直接費の計算に当てはめようとすると、妥当性議論が先行しなければなりません

 

ところが、その当たりが抜けてしまって作業測定によって直接コスト、そのほと

んどが作業原価であったために大問題となったわけです。

つまり、測定しても、何回調べても、いつもデータはぶれまくり、平均値さえ不

安定となり、測定作業そのものにどれだけエネルギーを投入しても結論が出ない

というジレンマに陥ったのです。

日本でまだブームが冷め止まずに講習会や解説書で苦戦していたその時、発明者

ロバートキャプラン先生は2005年に「もう止めよう、仮説で十分」とも言える

論文『時間主導型ABCマネジメント』を発表していました。

 

●測定すれば生産性は高くなり、標準値とは言えない現実は、測定者と測定され

る人間関係にもっとも影響され、とても事実データとは言えない。という結論や

報告を元にして、測定ではなく見なし時間で十分なのだ、という主張です。

事例も豊富で、伝票コストやバラ注文はケース注文に比べれば遙かに割高に着く

のは測定しなくても明かだろう。だから、価格条件や納品条件を変えて対処すべ

きなのだ、という主張です。

 

物流コストが掛かるだろう細かな注文は、卸値を上げて商談に臨むべきだし、そ

れによって業績は必ず好転するし、そうなった企業がたくさんあることを紹介し

ています。つまり、間接費でも直接費でも原価が明らかになるなら、売価を変え

よというのが先生の主張なのです。

 

●仮に物流コストを得意先ごとや作業別に算定できるなら、売価や商談条件に反

映しなくて、何の測定の意味があるのか、と鋭く説いているのです。ずいぶん昔

にということですけどね。

物流ABCを測定して疲れた経験は誰にでもあるでしょう、さらに仮説としての

測定値を使って伝票コストやバラピッキングコストを把握した経験がどのように

活かされているか、と聞かれて不安になるヒトも多いことでしょう。

 

過去データを調べて明日が分かれば幸いアレ、物流ABCを調べて商談の結果が

利益貢献となるなら幸いアレ、ということをキャプラン先生は複雑な理論を提供

した反省として改めて世に問うた訳なのです。

 

 それでどうなるんですか? という勉強が嫌いな学生の質問がありますが、勉

強は知識を増やしたり、成績を上げるためのものではなく、勉強を通じて辛抱強

さや努力、仮説と検証、要領の良さや執着心、積み上げの楽しさという体験を身

につける修練とか訓練だと言えることが分からないことが問題です。

 

それを調べてどうするんですか?キチンと答えてくださいね。

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