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■■□■■  物┃流┃現┃場・見┃た┃ま┃ま・感┃じ┃た┃ま┃ま┃  □
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□■■    2012/10/5 NO.486               □□■
■■     『物流センターは有望な投資案件か』不動産収益公式  □□■□
■      物流改善ヒントhttp://avance-tokyo.com       □□■□□
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■日本の法人不動産所有額は470兆円と言われている。国土全体では2300
兆円だから、土地が3割、建物が4割を181万の法人が所有している。土地神
話が待望すれども消滅した現在、不動産は有望な投資先とは言えなくなった。
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●貸倉庫事業と金融ビジネス

アメリカの日本法人プロロジスは物流施設専門の不動産開発会社というが、よく分か
らない存在だったが、不動産所有者から譲り受けて同条件で賃貸するなど、その手法
は魔法のようである。
大阪南港の開発案件は、超大型物流施設という巨大であるとも建築コストは坪当たり
40万円。月額賃料原価は2000円を下回ることになる。巨額な資金さえあれば、
有利な立地に最新大型の物流施設が開設できることが証明されている。

資金はダブついている、という投資家の話は新聞紙上だけでなく実態として株式や純
金の千両箱、デパートの外商展示会などの動きに納得がいく。利を求めて動く資金は、
用途を問わず世界を巡る。片や固定化してしまった土地、建物、長期借り入れを軽く
したい資本家オーナーもまた多い。企業を分社して、持ち株会社に転用したり、そん
なら計画倒産がリスクと言われないように、特定目的会社SPCという、不動産所有
の特殊法人に仕立てて、ケイマン諸島に株主を引越しさせるから、持ち主は解散権を
実行できない。金融はこのペーパーカンパニーに出資して、不動産収入から金融返済
を優先的に実行する。

巨大物流センターも、不動産所有者のオフバランス経営(資産の圧縮、削減)ニーズ
にも叶い、賃貸する3PL事業者にもデメリットは何もない。
こんなことが大都市圏の湾岸地域や航空港湾地区に、日常茶飯事のごとくに動き始め
てきて、乱立状態にまで見えてきた。

●不動産はキャッシュマシーンなのか

低金利時代が長く続くから資産家は資産の圧縮を進めてきている。インフレなら投資
案件が商品や不動産に集中するが、デフレの原因が過剰設備、過剰資産、過剰有利子
負債の圧縮とされてきたから、不動産を所有することは逆行している。土地神話はな
くなり、不動産を保有することはリスクを抱え込むことになるのだが、それでも価格
が下がっているから、あえて自社購入する動きもある。不動産収益の悪さは、資本の
過剰にもあって、大企業なら安心とは言えなくなっている。動きが鈍すぎるからだ。

メーカーの在庫削減と共に、物流企業では「過剰」とみなされた物流資産の売却、圧
縮に苦労している。営業力、提案力、開発力が先だけれど、それを放ると「所有」が
じゃまになる。ならば、引き受けるところが登場してくる。それが不動産開発会社や
投資ファンドの描く道だ。国有化されて誰もいなくなった国営銀行が買われ、売られ、
そして再び売られて立て替えをする。日比谷公園のすぐ近く、絢爛豪華な頭取室を誇
った日本長期信用銀行は、バブルの象徴として失意と失策によって、新生銀行に生ま
れ変わったが、その本店は今は無人である。新たな投資家が購入してオフィスビルが
計画されている。旧本店はいくらで売られ、どんな経緯を経てきたかは今は誰も関心
がなくなった。

●不動産の計算公式

仮に10億円の物流倉庫があったとしよう。長期負債が8億円あるとしても、金利負
担は2%をくだらない。適正な賃料収入が年間6%あると仮定すれば、10億の資産
は借入金利を控除しても4.4%の収益を生み出す。

総資本収益率という尺度で見れば、自己資本2億円が4400万円の収益を生み出す
ので、22%の収益力を持つことになる。既存事業を累々と重ねてきても数%の営業
利益に苦労していることから見れば、驚きの収益力である。

営業力、提案力、開発力いわば創造と革新がなせる技で、だぶつく投資資金を集める
力は、マーケティングそのものになる。プロロジスなどの不動産開発会社は、この低
金利時代と安定賃料収入の格差に、新規融資の道付けと物件の再評価を組み合わせた
新しいビジネスモデルを示している。まさに、老朽化した魅力の乏しい倉庫であっても、
再開発によってキャッシュマシーンに生まれ変われることが陽の目を見ている。

物流施策大綱で示されたニュービジネスとしての3PLが、なかなか頭角を現さない
内に、しっかり儲けのしくみを実現してしまったというところだろうか。

●コストダウン、SCM、在庫削減、・・・苦労の裏でほくそ笑む

商談条件が物流を変えるから、予定コストも変更ばかり、レベルワン程度の社内SC
Mも進まず、欠品と過剰在庫に相変わらず悩ましい物流業界だが、運営しないで物流
ビジネスが組み立てられるところに驚きがある。
本質は銀行支援のために始められた空前の低金利と、経済の実態にある資金金利の格差。
国の政策に常に正攻法はないにしろ、偏りがチャンスを生み出し、国民や庶民の苦労
をあざ笑うようだ。

近い将来の消費税負担に内需はしぼむ、物流は増えない、流通在庫は倒産によって雲
散霧消しながら、黒幕とはいえないが後ろ盾の本陣にはしっかり収益計算が成り立っ
てしまうところに、やるせなさが感じられる。子供の夢、大人の息抜き、幸せのシン
ボルだったテーマパーク、ゴルフ場が創業者の手を離れて、再スタートするときのお
かしな動きがもてはやされる記事にどこか不自然を感じる。それでも資本主義なら弱
者交代とひとまとめされる。

●負けに不思議なし

戦争にも一利あり、政治にも裏があり、誠意ある実業にも、しっかりとした影があり、
儲けの公式が隠されている。さて、このファイナンスという魔法の公式を知らずに実
業で汗を流すことだけが、誠実による清貧をもたらしているのではないか。

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